986M2はイタリアのバイクメーカーVYRUS(ヴァイルス)社の最新モデルです。VYRUS社のバイクは特徴的なハブステアリングシステムと過激なスタイリングで世界的に知られています。
量産車ではありえない程の超軽量な車体と、強烈なエンジンパワーがもたらすパフォーマンス。それに加えてハブステアによる異次元の安定感・安全性はまさに唯一無二。
VYRUSを率いるアスカニオ・ロドリゴは究極のスポーツバイク作りに徹底して拘り、全てのVYRUSバイクは顧客一人一人の走り方に合せてテーラーメイドされるため、同じ物が二つとありません。
その値段も500万〜1000万円オーバーと、とても高価な事でも知られていて、現代のスーパーバイクの中でも頂点に君臨する存在といっても過言ではありません。
www.vyrus.it
イガラシデザインでは2009年からニューモデル開発プロジェクトに参加して、アスカニオと共にこのバイクのデザインに関わってきました。
このプロジェクトで、イガラシデザインの使命は彼の理想を形にすること。アスカニオが長年温めていた数々のアイデアを盛り込みながら、一台のバイクとしてCGの中でまとめ上げて行くという作業です。
最終的にフランスやイタリアからもデザイナーが加わり、数々の障害を乗り越えてやっと完成に漕ぎ着けました。100%イガラシデザインではありませんが、あんなところやこんなところに私のデザインが残されています。
CGモデルの完成から程なくしてコンセプトモデルが完成。
小さな所帯のVYRUSですが、アスカニオの周囲にはイタリアのバイク産業一流の人脈があるようで、デジタルなワークフローからハイテク素材まで使って短時間で完成度の高い実車を仕上げてくる力には本当に驚かされました。
あののどかなVYRUSファクトリーからこんなマシンができるなんてちょっと想像しにくいかも。
- 986M2 CG Rendering
- 986M2 CG Rendering
- 986M2 at VeronaShow
- 986M2 at VeronaShow
- 986M2 Concept
- 986M2 Concept
2010年、Verona MotorBike EXPOで衝撃のデビューを飾り、ショーの主役となったこの986M2。
それはあのBIMOTA TESIシリーズから着々と進化を重ねてきたハブステアマシンの最新モデルにして、世界GP•Moto2カテゴリーにエントリーする為に作られた生粋のレーシングマシンです。
アッパーフレームは、カウルも兼ねた軽量なカーボンモノコック。Moto2レギュレーションで規定されたホンダ製600cc直列4気筒エンジンを搭載しています。
このコンセプトモデルの見所の一つは油圧ステアリングシステム。
従来モデルではハンドルから二本のロッドを介してホイールに伝達する方式でしたが、レイアウトの自由度が限られるためスタイリングの面でも大きな障害でした。幅広い4気筒エンジンでは特にそうで、油圧式の採用は本当に嬉しかった点です。
ステアリングヘッド直下に内蔵されたマスターユニットと、スイングアームの下に見える油圧シリンダーとがホースで繋がれています。かつてTesiの初期プロトタイプでも油圧式が採用されていましたが、20年以上の時を経て現代のテクノロジーで復活しました。
前後ショックのリンケージは左右にプッシュロッドとロッカーアームを持つ珍しい横置き型です。
特にフロントのリンケージはスペースが限られるためギリギリのレイアウト。アスカニオのアイデアを聞いた時は"どこにそんなスキマがあるのか?!"と思いましたが、作ってみれば不思議と収まるもので流石といったところです。
ラジエーターは従来のVYRUS同様エンジンの下にマウントしてあります。
リアスイングアームの上にある三角形がマフラーの排気口です。
出来上がったマシンからも一目瞭然ですがアスカニオのディレクションには"コンベンショナルからの脱出"という意思を強く感じます。この986M2は、スタイリングからメカニズムまで彼の意思が色濃く反映されていて、まさにアスカニオの作品と呼べるものになっています。
986M2は、その後より実戦向きの仕様に変更を受けて熟成が進められています。
右の動画はミサノサーキットで行われた英MCN誌によるテストライドの模様です。
油圧ステアリングは引き続き開発中ですが、写真の仕様ではシンプルなリンクでハブとステアリングヘッドを結ぶタイプになっています。
超軽量な車体にパワフルなエンジン、ハブステアシステムがもたらす抜群の安定感。
テストライダーさんのお話では、その速さはかなりのレベルに達しているとのこと!
2012年 日本への第一号車が上陸し、8月の鈴鹿8耐会場で展示され大好評をいただきました。
2017年
MOTO CORSEさんにてVYRUSの取り扱い開始しました。